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米国外軽課税無形資産所得(Global Intangible Law-Taxed Income, GILTI)合算課税

税務

2023年6月
米国外軽課税無形資産所得(Global Intangible Law-Taxed Income, GILTI)合算課税

2017年の税制改正では法人税率の35%から21%への引き下げのみならず、多くの新しい制度が導入されましたが、Foreign-Derived Intangible Income (FDII) 控除(2023年1月の会計税務情報で紹介)と並んで、多くの日系企業にとって大きなインパクトがあったものの一つが、米国外軽課税無形資産所得(Global Intangible Law-Taxed Income, GILTI)合算課税でした。そこで、普段、税務申告書を細かく見る機会の少ない方にもGILTIの基本的な理解をして頂くため、その概要をご紹介したいと思います。

GILTI合算課税が導入された背景

特許権、商標権などといった無形資産から発生する所得は、これらの特許権、商標権の登録地等を米国から他の税率の低い国に移転することによって、これらから発生する所得の税金を低減させることが比較的容易にできることから、多国籍企業を中心にこれらの課税を米国から他の低税率国に移転させるような動きが問題視されていました。そこで、特定外国子会社(Controlled Foreign Corporation, CFC、原則として、ある会社の議決権または価値の50%超を保有するときその会社)で発生した課税所得のうち「無形資産から発生した所得(Net Tested Income からみなし動産リターンを引いたもの)については、米国に配当還元されることを待つまでもなく、課税しますよ。」ということとしました。これは、2023年1月の会計税務情報でご紹介したFDII控除と対で機能する制度となっています。

GILTI合算課税のステップ

  • 各CFCのTested Income(米国税法に当てはめた時の税引き後の所得)を算定。
  • 米国株主は、上記の各CFCのTested IncomeとLossの持分相当分を合算する。これをNet Tested Incomeと呼ぶ。
  • プラスのTested Incomeが発生しているCFCが保有する償却資産の持分相当分を合算し、これに10%を乗じて、さらに特定の支払利息を控除することによって、みなし動産リターンを算定する。
  • Net Tested Incomeからみなし動産リターンを差し引くことによって、GILTIを算定する。
  • GILTIの50%相当額がGILTI所得控除となる。
  • GILTIに対応する外国法人税額の80%をGILTIバスケット内で税額控除
  • GILTIに対応する外国法人税額の100%をグロスアップした上で、GILTIバスケット内の税額控除を計算。


GILTI合算課税の具体例

前提① 外国法人が低税率国であった場合

  • 米国法人であるA社は、外国法人であるB社を100%有している。
  • B社の税引前利益は100であり、法人税額が5であったため、税引後利益は95であった。なお、税務上の加減算調整はなく、税引き後利益の95がそのままTested Incomeであった。
  • B社は有形償却資産(みなし動産QBAI)は50であった。したがって、みなし動産リターンは5となる。


(GILTIの合算による追加納税額)

  • GILTI=95 (Tested Income) – 5 (みなし動産リターン) = 90
  • Gross up = 5 (法人税額)× (90 (GILTI) / 95 (tested income)) = 4.74
  • GILTI所得控除 = (90 + 4.74) × 50% = 47.37
  • 外国税額控除 = Gross up (4.74) x 80% = 3.79
  • GILTIによる追加税額 = 47.37 × 21% – 3.79 (外国税額控除) = 6.16


(前提② 外国法人が米国と同水準の税率国であった場合)

  •  米国法人であるA社は、外国法人であるB社を100%有している。
  • B社の税引前利益は100であり、法人税額が25であったため、税引後利益は75であった。なお、税務上の加減算調整はなく、税引き後利益の75がそのままTested Incomeであった。
  • B社は有形償却資産(みなし動産QBAI)は50であった。したがって、みなし動産リターンは5となる。


(GILTIの合算による追加納税額)

  • GILTI=75 (Tested Income) – 5 (みなし動産リターン) = 70
  • Gross up = 25 (法人税額)× (70 (GILTI) / 75 (tested income)) = 23.33
  • GILTI所得控除 = (70 + 23.33) × 50% = 46.67
  • 外国税額控除 = Gross up (23.33)×80% = 18.67
  • GILTIによる追加税額 = 46.67 × 21% – 18.67 (外国税額控除) = マイナスとなるので、GILTI合算による追加納税はなし。


このレターでは、読者がなるべく理解をしやすいよう、枝葉末節にとらわれず、一般論を記載するよう心がけています。個別の内容については、プレミア会計の各担当者にお問い合わせください。

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