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日本と米国における経理実務の違い③―Sales Tax(売上税)と消費税の違い

税務

2023年8月
Sales Tax(売上税)と消費税の違い

アメリカの多くの州には地方税の一つとしてSales Taxがありますが、日本における消費税との違いについて、実務上の観点からご紹介したいと思います。

消費税は流通の各段階において課されるのに対して、Sales Taxは最終消費者に対する売上に課税される
例えば、製造会社Aが卸売業Bに対して1000の製品を販売。卸売業Bは1000で仕入れた製品を最終消費者Cに1500で販売します(Cは当該資産を固定資産として使用)。税率は10%とします。なお、下記では、売上原価関係の仕訳は省略します。

(アメリカの場合)
製造会社Aの仕訳(借方)売掛金 1000 (貸方)売上1000
卸売業Bの仕訳 (借方)商品 1000 (貸方)買掛金 1000
卸売業Bの仕訳 (借方)売掛金 1650 (貸方)売上 1500、 未払売上税 150
最終消費者Cの仕訳 (借方)固定資産 1650(売上税150を含む)(貸方)未払金 1650

(日本の場合)
製造会社Aの仕訳(借方)売掛金 1100 (貸方)売上1000、 仮受消費税 100
卸売業Bの仕訳 (借方)商品 1000、 仮払消費税 100 (貸方)買掛金 1100
卸売業Bの仕訳 (借方)売掛金 1650 (貸方)売上 1500、 仮受消費税 150
最終消費者Cの仕訳 (借方)固定資産 1500、 仮受消費税150(貸方)未払金 1650

上記の通り、アメリカでは最終消費者から預かった売上税150を、すべて、最終消費者と取引を行った卸売業Bが納付することになります。一方、日本の場合は、製造会社Aが100、卸売業Bが50、納付することとなります。アメリカの場合、購入サイドは、基本的には日本のように仮払消費税を別建て処理で仕訳を行うようなことはしません。最終消費者から売上税を徴収した事業者のみが、預かった金額を未払売上税として処理をします。

Sales Taxでは、最終消費者への販売ではないことを確認するために売上先からCertificateの入手が必要

Sales Taxの回収は最終消費者への販売時のみで良いわけですが、そのためには売上先が最終消費者なのか、再販売することを目的としたものなのか、確認をすることが必要です。売上をする際には、売上先が再販売を目的とする場合には、当該売上先から再販売目的であることを示すCertificateを入手することが必要です。カリフォルニアでは、そのCertificateをResale Certificateと呼んでおり、再販を行う事業者がCalifornia Department of Tax and Fee Administrationに、販売活動そのものの許可を示すSeller’s permitを申請し、その際に付与されるSeller’s permit numberを、所定のフォームのResale certificateに記載します。
時折、売上税の税務調査が入ることがありますが、その際にチェックされる項目の一つが、Sales Taxを徴収していない取引について、Resale Certificate が入手されているかという観点になります。
一方、日本では、このようなことは必要がない代わりに、原則すべての会社において、毎回の仕訳処理で課税か非課税か等といった判断が必要になり、日々の仕訳処理の実務にある程度の経験が必要とされるとともに、手間がかかっているように思います。

Sales Taxの課税対象と税率
課税対象は州によって異なります。そもそも、オレゴン州などのようにSales Taxがない州もあります。また、多くの州では物品を課税対象としており、サービスに対しては課税しない州が多いように思います。また、政策的に課税対象から外されている物品もあります。詳しくは、州ごとに確認が必要です。また、税率も州や市等によって異なります。我々のオフィスのあるトーランス市は10%ですが、お隣のレドンド・ビーチ市やパロス・バルデスでは9.5%となっています。

Sales Taxの申告納付
Sales taxの課税は、原則的に売上先の所在地で発生します(もちろん州により細かいルールはありますがここでは省略します)。したがって、全米の顧客に販売している場合などは、各州に申告が必要です。また、州の中でも市町村により税率が異なることがありますので、アメリカのSales Taxでは、どこにいくら売ったのかという情報が極めて重要になります。また、これらの管理には一般的にはSales Taxの納税申告を管理できる機能を有している会計ソフトか、Sales Tax専用のソフトウェアを使って、効率的に作業を行うことが重要です(手作業ではとても対応できません)。なお、各州の申告納税においては、少額の取引に対してわざわざ納税申告をする手間を免除すべく、州によって、一定額、または、一定件数の取引があった場合のみ、申告納税をすることとなっています。金額基準としては多くの州で、年間合計10万ドル以上の当該州での売上を申告の要件としているようです。

このレターでは、読者がなるべく理解をしやすいよう、枝葉末節にとらわれず、一般論を記載するよう心がけています。個別の内容については、プレミア会計の各担当者にお問い合わせください。

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