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米国における給与手続きの実務

税務

2023年10月
米国における給与手続きの実務

日米の会計税務実務の違いとして、たびたびご質問を頂く「給与手続きの違い」について、ご紹介いたします。

米国には年末調整がない
これは比較的広く知られていることかと思いますが、日本ではいわゆる「年末調整」が行われ給与所得に関する1年間の税金(源泉徴収額)は1年間の最後の給与で調整されます。これは、給与支払者にとっては大きな事務的負担である一方、従業員にとっては税務申告の手間が省けます。日本の税務当局にとっては、給与所得に関して正しい税額の徴収が各給与支給者の貢献によってなされています。
一方、米国ではそのような制度がないため、原則、一定の額を超えるとすべての人が申告納税を行います。

申告期限
日本では個人の所得税は翌年の3月15日が申告期限となっています。「期限延長申請書」の提出による申告期限の延長の制度はありますが、あまり一般的ではありません。一方、米国は申告期限が翌年の4月15日となっており、申告期限の延長申請により6か月間の延長(申告期限は10月15日となる)が認められています。ただし、納税は4月15日までに済ましておかないと、利子等が発生します。

個人申告と夫婦合算申告
日本では、基本的には個人ごとに税金計算がされます。したがって、夫婦共働きでそれぞれが年収500万円の場合と、夫のみが働き年収が1000万円の場合、世帯の収入としてはともに1000万円となりますが、前者の方が給与全体として低い税率が適用される等の理由で、後者よりも税額の合計としては小さくなります。一方、米国では個人ごとに申告納税を行うこともできますが、「夫婦合算申告」という選択が可能ですので、日本でみられるような不平等は生じません。

給与の支給の頻度
日本は、月1回支給の会社が多いように思います。一方、米国では、月1回、月2回、2週間に1回等、様々なバリエーションがあるとともに、全体としては支給頻度は多くなっています。
給与から差し引かれる税金等
米国で給与から差し引かれる税金等についてたびたび質問を頂きます。カリフォルニア州の場合、以下の通りです。
    • 連邦所得税
    • 州所得税
    • 連邦FICA税(6.2%の社会保険税、1.45%のメディケア税、雇用者側も同額負担)
    • 州障害保険
なお、雇用者側だけが負担する税として、「失業保険税(連邦・州)」「州トレーニング税」があります。

給与ソフトウェアの利用
米国では源泉税の納付期限が金額によって異なること、州や場合によっては市町村によっても税額が異なること等、日本に比べて給与手続きが煩雑であり、すべてのルールに社内でキャッチアップすることは困難なため、多くの会社は給与ソフトウェアを利用しています。給与支払者は、各個人の様々なデータを入力すると、ソフトウェアが給与計算から給与支給、申告納税手続きまですべて行ってくれます。給与を受け取る従業員は、自身のアカウントにアクセスすれば給与明細を見ることができますし、年末には日本での源泉徴収票にあたるForm W-2をダウンロードできます。日本でも少しづつシステム化は進みつつあるようですが、まだまだほとんどの会社が自社内で計算から納税まで行っているのではないでしょうか。

連邦、州、市町村への届け出
米国では、前述の通り、源泉徴収税等を、給与ソフトウェアを利用して、連邦、州、各市町村等に申告納税を行いますが、これらの手続きの開始にあたり、連邦、州、各市町村への届出登録等が必要です。特に、市町村ごとに給与税がある場合には、なかなか手間のかかる作業となります。日本では、1年間の給与所得に関する住民税(個人所得の地方税)は、翌年の6月から翌々年の5月まで「特別徴収」という形で徴収納税されますが、米国ではこのような時期のずれはありません。

ソーシャルセキュリティー番号、日米年金協定、グロスアップ計算
特に、日本から米国に駐在で渡米される方が考慮すべき点として、ソーシャルセキュリティー番号の速やかな取得、日米年金協定を踏まえたFICA税の取扱い、グロスアップ計算があります。これらは渡米前に早めに準備を進めることをお勧めいたします。

このレターでは、読者がなるべく理解をしやすいよう、枝葉末節にとらわれず、一般論を記載するよう心がけています。個別の内容については、プレミア会計の各担当者にお問い合わせください。

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