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交際費の税務(日米の違いと実務上の留意点)

税務

2024年4月
交際費の税務(日米の違いと実務上の留意点)

交際費の一部、または全部が損金算入できないことは、日米の会計実務に携わる人々によく知られるところです。一方、日本の交際費という言葉を英語に訳す際に「Entertainment」と訳されることもあり、実際の税務上の取り扱いにおいては、さまざまな誤解を招いていることが良く見られます。今回は、それらの誤解を解きつつ、アメリカにおける交際費の税務上の取り扱いについて、概要を説明したいと思います。

日本人の実務家が陥りやすい誤解


日本の法人税法では、交際費の定義を以下のように定めています。
「交際費、接待費、機密費その他の費用において、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」 (租税特別措置法関係通達 61の4(1)-1 交際費等の意義)
したがって、日本の法人税法が想定する交際費には、ビジネス上の打ち合わせをする際のクライアント等との食事代なども含まれます。

一方、交際費という言葉を英語に訳す際に一般的には「Entertainment」と訳すため、在米日系企業の中には、こうしたクライアントとの食事代なども、日本の税務実務にしたがって「Entertainment」と会計処理されるケースが散見されます。しかし、米国税務において想定される「Entertainment」は、誤解を恐れずに言うならば、例えば、プロフットボールの試合にクライアントを招待するとか、有名な歌手のコンサートに招待する等といった、やや特別なもてなし的なものを想定しており、ちょっとランチミーティングしました等というものは「Entertainment」には当たりません。そして、米国税務では、「Entertainment」は全額損金不算入であるのに対し、いわゆる会食ミーティング的なものは、50%控除となっています。したがって、日本の税務と同じ感覚で「Entertainment」として税務上も処理をすると、本来50%控除できるものが、100%損金不算入になってしまうケースが見られます。

米国税務における50%控除会議費


では、米国税務が想定する50%控除の会議費(IRC274(n))はどのようなものでしょうか。
通常かつ必要なもの: 食事は、通常かつ必要なものでなければなりません(IRC162(a))。

  • 事業との関連: 食事とビジネス(議論、会議、取引、交渉など)との間に明確な関連性がなければなりません。つまり、食事の前、食事中、または食事後に発生する会議、視察等のイベントに関して、それらのイベントがビジネス目的であることを証明する必要があります(IRC274(a) and Notice 87-23)。
  • 贅沢または浪費: 食事代は、贅沢または浪費的でない範囲でのみ控除の対象となります。贅沢または浪費とみなされる部分は損金不算入となります(IRC274 条(k))。
  • 根拠: 適切な立証がなされた食事費用のみ控除が認められます(IRC274(d))。
  • 納税者の同席: 納税者またはその代理人が同席しなければなりません(IRC274(k))。

 

米国税務における交際費

米国税務における交際費については以下の点等について留意が必要なものと思われます。

  • 前述の50%控除会議費の要件を満たさないような、いわゆるEntertainment、Amusement、Recreationは交際費として、100%損金不算入となる。
  • Entertainment Activitiesの間に支給される食事で、Entertainment Activitiesのコストと一緒になっており、食事に関するコストが区分できない場合は、前述の50%控除会議費の要件を満たす場合においても、100%損金不算入のEntertainment Expenseとなる(Regs. Sec. 1.274-11(b)(1)(ii)。

その他

  • 従業員を対象とした通常のリクリエーションは全額損金算入できます。(IRC274(e)(4))
  • Conventionのためのコストの取り扱い(IRC274(h))
  • 従業員のAchievement Awardsのためのコストの取り扱い(IRC274(j))

 

このレターでは、読者がなるべく理解をしやすいよう、枝葉末節にとらわれず、一般論を記載するよう心がけており、プレミア会計が専門家としていかなるアドバイスを提供するものではありません。個別の内容については、専門家にお問い合わせください。

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