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米国の税制を日本の税制との比較で理解する①

税務

2024年7月
米国の税制を日本の税制との比較で理解する①

弊所では、日本の様々な上場企業をはじめ、大小を問わず多くのクライアントの皆様のお手伝いをさせていただいています。初めて米国進出されるクライアントにとって、米国の税制の概要をご説明差し上げる際、日本の税制との比較でご説明させて頂くとご理解いただけることがあります。今回から複数回にわたり、実務の観点から米国の税制の概要を日本の税制との比較をしながらご紹介したいと思います。なお、以下の記述中、州税については特段記載がない限りはカリフォルニア州を前提としており、例外も多くあることから、あくまでも原則あるいは多くのケースのこととご理解ください。

法人税
会計上の損益に、一定の加減算項目を調整して算出した「課税所得」に対して、一定の法人税率をかけることによって計算されます。 日本では、国税、地方税(都道府県、市町村)と3か所に申告書を提出しますが、米国では原則、連邦税、州税(州によっては、州ではなく市への申告)の2か所への提出となります。日本では、一般的には、国税と地方税で課税所得に大きな差はありませんが、米国では、加減算項目の考え方に大きな違いがあることから、連邦の課税所得と州の課税所得が大きく異なることは珍しくありません。なお、法人税率は、連邦が21%、カリフォルニア州は8.84%であるのに加え、課税所得がマイナスであったとしても、最低800ドルの納税義務があります。

なお、米国での申告納付の期限は、期末日後4か月目の15日となっており、申告期限の延長申請の届け出によって、6か月間の延長が可能です(6月決算法人のみ例外あり。また、カリフォルニア州税は7か月の延長)。ただし、納税は原則通り4か月目の15日までに済ませておかないと、利息が発生します。日本では、申告期限の延長申請を提出したとしても基本1か月の延長が認められるだけであるのに対し、米国は6か月ですので多くの会社が申告期限の延長を行っています。また、予定納税は、日本が年1回であるのに対し、米国では年4回となっています。

課税所得を算出するにあたっての加減算項目は、もちろん日米で大きな差がありますが、実務的によく見られるもの、また、質問を受けることが多いものは以下の通りです。

  • 日本では会計と税務で減価償却の金額に差があることは少ないが、米国では、会計と税務の減価償却は全く別物として計算されるので、加減算項目に登場することが多い(2023年2月ニュースレター参照)。また、米国の主に連邦税では、投資を促進するための特別償却制度が充実しており、ほとんどの会社で適用の可能性がある。
  • 日本では、役員賞与の損金算入については、原則としていわゆる「定期同額」であることが求められる。米国では、そのような制度はないため、合理的な金額ある限り損金算入が否認されることはない。
  • 交際費課税が日本とは異なる(2024年4月ニュースレター参照)。
  • 日本では賞与引当金の損金算入は認められない一方で、一定の要件を満たして期末日以降1か月以内に支払われた賞与について損金算入が可能。米国では、一定の要件を満たして期末日以降2.5か月以内に支払われた賞与について損金算入が可能。

売上税と消費税
売上税と消費税の違いについては、2023年8月ニュースレターをご参照ください。

日本の消費税は財、サービスいずれも課税対象となっていますが、米国の売上税は多くの州では財のみが課税対象となっています。日本の消費税の申告は、国税分と地方税分をまとめて1つの申告で完結する一方、米国の売上税の申告は、売上の発生場所(商品の引き渡し場所、配達先等)をベースに州ごとに行います(カリフォルニア州の場合、州の申告の中でカウンティ―ごとの売上税対象額を記載することとなります)。したがって、全米にわたってビジネスを展開している場合等は、売上税申告の事務負担が大きくなることから、それらに対応可能なシステム導入が必要です。

なお、各州は、申告が必要となる一定の売上金額を定めており、カリフォルニア州の場合は年間50万ドル(他州の多くは年間10万ドル)となっています。したがって、年間売上高がこれらの金額を超えない場合には、売上税の徴収、申告ともに必要はありません。なお、税率は、カリフォルニア州トーランス市の場合10%、申告のタイミングは、日本の場合、原則年に1回ですが、米国の場合、課税対象額によって、月、四半期、年のいずれかの申告頻度となります。

日本の消費税では、2023年8月のニュースレターでも触れた通り、売上取引だけではなく、仕入取引、経費取引を含めたすべての仕訳について、課税、非課税の判断を行う必要があるため仕訳入力者に相応の消費税の知識が必要となります。米国では、売上取引についてのみ、課税、非課税の判断をすれば良く、実務的な負担は少ないように思います。ただし、前述の通り複数の州への申告が必要となるケースなどは、州や市によって異なる税率を適用するなど実務的に困難な点もあり、システム対応が必須となっています。

このレターでは、読者がなるべく理解をしやすいよう、枝葉末節にとらわれず、一般論を記載するよう心がけており、プレミア会計が専門家としていかなるアドバイスを提供するものではありません。個別の内容については、専門家にお問い合わせください。
This article is intended as general information only and does not constitute professional advice. Using this document or any other material provided by Premier Kaikei LLP, Premier does not create a professional-client relationship. All information should be independently verified before being relied on or acted upon. Please speak to an experienced professional for case-specific questions.

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