金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX) ~(参考) 不正のトライアングルと職務分掌の重要性~
Premier Kaikei
2026年2月2日
その他
2026年2月
金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX)~(参考) 不正のトライアングルと職務分掌の重要性~
「不正のトライアングル」とは、人が不正を働いてしまう際の条件を、犯罪学研究者であるドナルド・クレッシーが導き出した理論を元にスティーブ・アルブレヒトがモデル化したもので、現在は不正対策や不正分析において最も一般的に用いられる考え方となっています。

この3つの条件のうち、動機と正当化に関しては、個人的な状況が関わる場合には完全に防ぎづらいものがあるものの、内部統制の6つの基本的要素のうち一番重要な要素とされている「統制環境」を整えることにより不正リスクを軽減することができると考えられています。企業理念において倫理観や誠実性を重視し、それを繰り返し教育することにより不正への抵抗を感じるようなコンプライアンス意識の高い企業風土を作り出すことが非常に大切で、「Tone at the Top」が大きく影響を及ぼすと言えます。
一方、機会については、ガバナンスの仕組みや内部統制を整備することによって企業不正を発生させるリスクを低減することができます。機会の観点から考えると、内部統制を構築する上で「職務分掌」の重要性が高いというのが理解しやすいのではないでしょうか。つまりは、業務を複数の人員で分担・分離することで、不正を行うチャンスを減らすということで、具体的には下記の観点から業務の分担・分離を考えます。
- 承認 (Authorization): 取引のレビュー、承認、監督
- 資産の保全 (Custody): 取引に関連する資産の受領、アクセス、管理
- 記録 (Recordkeeping): 取引に関連する会計記録の作成と保管
- 調整 (Reconciliation): 取引記録と外部の銀行明細書など、2つの記録がタイミングと金額に関して一致していることを確認
例として、不正が起こりやすいとされる「現金」が関係する銀行取引をどのように職務分掌するのが適切かを考えてみたいと思います。銀行口座にアクセスできる者・承認する者と記録する者を別に配置し、更にはもう1人が個々の取引の承認や月次の銀行調整を行うなどといった形で分担することで、現金が不正に支出され、発見されぬまま不正が行われ続ける状態を防止できます。
職務分掌できる人員数が限られている場合には、リスクと統制のバランスを考えて職務分掌を設計すると良いでしょう。
なお、内部統制には限界があると言われていますが、いくら職務分掌がしっかりした内部統制を整備していても下記の要因により完璧に機能する訳ではないことも意識しておく必要があるでしょう。
- 判断ミスや複数担当者による共謀: 担当者レベルでの内部統制の逸脱が発生する可能性があります。
- 環境の変化と否定形取引: 内部統制構築時には想定されておらず内部統制整備状況の不備が発生する可能性があります。
- 費用対効果: 内部統制はリスクベースにより費用対効果を判断し構築する必要があるため、完璧な内部統制を構築するのは困難です。
- 経営者による不正や内部統制の無効化: 内部統制を構築する責任のある経営者による内部統制の無視。担当者レベルでの不正はある程度限界があるが、経営者による不正は財務諸表に重要な虚偽表示を及ぼす可能性が高いとされています。これについては、当シリーズ最終回にて深堀りしたいと思います。
米国子会社の経営環境においては、従業員の入れ替わりが多く発生したり、人材不足により適切なリソースが十分に確保できない状況がよく発生します。
職務分掌の重要性と内部統制の限界を意識しつつ、合理的に不正リスクを軽減できるような内部統制を整備することが大切で、リスクが高いと考えられる部分には情報システムを活用してコントロールする、モニタリングでのコントロールを強くする、あるいは、アウトソーシングで外部の専門家を起用するなどといった対応策が考えられます。外部の専門家を起用する場合には、単に作業を分担してくれるアウトソーサーを採用するよりも、内部統制の知識と経験を要した専門家を起用して不正リスクを低減するような業務フローを、両者で協力しながら構築することが大切だと考えています。
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