金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX) ~(参考) 不正に関する調査結果~
Premier Kaikei
2026年1月4日
その他
2026年1月
金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX)~(参考) 不正に関する調査結果~
今回は、公認不正検査士協会(ACFE)が毎年公表している「職業上の不正に関する国民への報告書」(Report to the Nations)から、2024年度版のデータをご紹介しようと思います。 ACFEは1988年に米国で設立された、不正の防止・発見・抑止を目的とした国際的組織です。
- 不正の体系図
ACFEでは職業上の不正(Occupational Fraud)を「汚職」「資産の不正流用」、「財務諸表不正を含む不正な報告」の3種類に分類・整理しており、 「不正の体系図」は不正を体系的に表示するものとしてグローバルスタンダードとして使用されています。

- 不正の損失額(中央値)
財務諸表不正は、他の2つのタイプの不正(資産の不正流用、汚職)に比べ、損失額が高くなる傾向にあります。また、不正に関与した人という観点から分析すると、オーナーや経営幹部が関与した場合の方が損失額が高くなり、これはオーナーや経営幹部は財務諸表不正に関与するケースが多いからだと考えられます。
また3つの不正タイプごとの件数比率の合計が100%にならない理由は、1件の不正案件が複数の不正タイプに該当するケースがあるためです。2024年の調査においては財務諸表不正のみの事例は1%にとどまっており、財務諸表不正を行う者は他の不正も同時に行う可能性が高いことを意味しています。
損失額中央値 / 件数比率
- 資産の不正流用: $120,000 / 89%
- 汚職: $200,000 / 48%
- 財務諸表不正: $766,000 / 5%
損失額中央値
- 従業員による: $60,000
- オーナー/経営幹部による: $459,000
- 地域別分析(米国・カナダ)
「職業上の不正に関する国民への報告書」(Report to the Nations)では、地域別の分析も公表しています。弊社の拠点である米国を含む「米国・カナダ」のデータを見てみると、
従業員による不正の損失額は米国・カナダでは全世界に比較して若干高くなっている一方、オーナー/経営幹部による不正は約65%($300K/$459K)程度の損失額にとどまっています。
※管理職による不正は、全世界の分析が調査結果に記載されていないため残念ながら比較不能となっています。
損失額中央値
- 従業員による: $61,000
- 管理職による: $155,000
- オーナー/経営幹部による: $300,000
- 不正スキームの件数比率と損失額
他の不正スキームに比べると圧倒的1位になっているのが「汚職」です。米国・カナダにおける汚職を伴う不正件数比率は全世界に比べ少ないものの、米国・カナダにおいても1位となっています。
汚職には「不正なキックバック」も含まれています。
キックバックとは、例えば一定数量以上の商品を仕入れたなど一定の条件において、販売促進や謝礼の目的で取引先に対して支払額の一部を割戻すことを言い、これ自体は通常のビジネス慣行であり不正には該当しません。ただし、売り手と買い手の担当者間で金銭的な利益が出るように秘密裏で個人的な合意をし、担当者間でキックバック分を懐に入れて私腹を肥やすなどといった行為は不正です。複数社からの見積もりをもとに取引先を選定するプロセスを導入したり、購買担当者の定期的なロテーションなどが有効な対応策だと言われます。
次に、資産の不正流用における個別の不正スキーム別に件数比率を見ると、全世界と米国・カナダで件数比率に違いはあるものの、「棚卸資産・その他資産」「請求書不正」が20%超、次いで「経費精算」「小切手・支払改ざん」「手元現金の不正流用」「スキミング」「ラーセニー」「給与不正」が10%超でした。
なお、被害額からみると「請求書不正」や「小切手・支払改ざん」が$100Kを超えており、「棚卸資産・その他資産」やその他の不正スキームが続いている形でした。

- 不正対策の導入状況
ACFEでは企業が導入している不正対策に関しても調査しています。これを見る限り、米国・カナダは全世界に比べて各対策の導入率が低いものが多いですが、行動規範(Code of Conduct)が最上位に来ているなど、順位には大きな相違はないように見受けられます。
「財務報告に関する内部統制」に関してはUS-SOXの仕組みが外部監査であるため、「財務報告に関する内部統制の”外部監査”」が当調査上では不正対策の項目となっていますが、エッセンスとしては企業内部だとしても専門性のある独立性を保った部門が評価することが要だと思います。

今回のデータの出典は下記の通りです。ご興味のある方は全レポートを参照してみてください。
2024年度版「職業上の不正に関する国民への報告書」(Report to the Nations) https://www.acfe.jp/wp-content/uploads/2024/07/RTTN_2024_JP1-.pdf
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