輸出売上、海外収入の所得控除制度―Foreign Derived Intangible Income (FDII) 控除
Premier Kaikei
2023年1月13日
その他, 税務
2023年1月
輸出売上、海外収入の所得控除制度―Foreign Derived Intangible Income (FDII) 控除
2017年の税制改正では法人税率の35%から21%への引き下げのみならず、多くの新しい制度が導入されましたが、中でもForeign-Derived Intangible Income (FDII) 控除は、多くの日系企業にとってもインパクト(メリット)の大きな変更でした。そこで、普段、税務申告書を細かく見る機会の少ない方にもFDIIの基本的な理解をして頂くため、その概要をご紹介したいと思います。
FDII控除が導入された背景
特許権、商標権などといった無形資産から発生する所得は、これらの特許権、商標権の登録地等を米国から他の税率の低い国に移転することによって、これらから発生する所得の税金を低減させることが比較的容易にできることから、多国籍企業を中心にこれらの課税を米国から他の低税率国に移転させるような動きが問題視されていました。そこで、「無形資産から発生した所得のうち海外売上に関するもの(Foreign-Derived Intangible Income)に関する税金を米国で納めてくれたら、税率を低くしてあげますよ。」というにんじんをぶらさげて、米国での納税にモチベーションを与えるために導入されたものがFDII控除でした。
「無形資産から発生した所得のうち海外売上に関するもの(Foreign-Derived Intangible Income)」をどのように決定するか
それでは、どのように「無形資産から発生した所得のうち海外売上に関するもの」を決定するのでしょうか。この難題を解決するために、税法では、下記のようなかなり無理のある計算方法を定めることとなりました。
- 「有形資産から発生した所得(Deemed Tangible Income Return)」を計算し、所得全体(Deduction Eligible Income)から差し引くことによって、「無形資産から発生した所得(Deemed Intangible Income)」を推定する。
- 上記で推定された「無形資産から発生した所得(Deemed Intangible Income)」に、「海外売上比率(Foreign-Derived Ratio)」を乗じることによって、「無形資産から発生した所得のうち海外売上に関するもの(Foreign-Derived Intangible Income)」を決定する。
「有形資産から発生した所得(Deemed Tangible Income Return)」をどのように決定するか。
一定の有形資産の税務上の簿価(Qualified Business Asset Investment)の10%相当額
A domestic corporation’s QBAI is the average of the aggregate of its adjusted bases, determined as of the close of each quarter of the tax year, in specified tangible property used in its trade or business and of a type with respect to which a deduction is allowable under section 167. (Regulations 1.250(b)-2)
「海外売上比率」をどのように決定するか。
細かい規定は省略しますが、基本的には下記の売上が「海外売上」となり、売り上げ全体に対するこれらの比率が「海外売上比率」となります。
- 国外で使用されるために外国法人等に財を販売することによって発生する所得(Regulation 1.250(b)-4)
外国法人等、あるいは、外国に存在する財に関連して提供されるサービス(Regulation 1.250(b)-5) - 以上によって決定された「無形資産から発生した所得のうち海外売上に関するもの(Foreign-Derived Intangible Income)」に対する37.5%の所得控除を受けることができます。
事例
以上を踏まえて簡単な事例をご紹介します。
A社は、米国内で調達した商品を日本の親会社に販売することを主たるビジネスとしている。2022年12月期における売上高500万ドルはすべて日本の親会社に対する売上、税引前の当期純利益は50万ドルで税務上の所得の加減算はなかったものとする。また、A社が所有する固定資産は備品等の5万ドルのみであった。
FDII=($500,000-$50,000*10%)*100%=$495,000
FDII控除=$495,000*37.5%=$185,625
連邦法人税=($500,000-$185,625)*21%=$66,018.75
この事例の場合、通常21%の法人税率が、FDII控除を取ることによって、実質的には13.2%となっています。このように、特に、海外売上比率の高い会社、また、有形固定資産の少ない会社にとっては、大きなメリットとなる可能性の高い制度と言えます。
このレターでは、読者がなるべく理解をしやすいよう、枝葉末節にとらわれず、一般論を記載するよう心がけています。個別の内容については、プレミア会計の各担当者にお問い合わせください。
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