「任せること」が、チームの力を育てる
~言葉の壁を越えて、現地社員が力を発揮できる組織へ~
前回のニュースレター「信頼は、『理解すること』から始まる」では、駐在員と現地社員がお互いの立場を理解することの大切さについてお伝えしました。
今回は、その理解を土台に、信頼を「任せる」という行動につなげていくことについて考えてみたいと思います。
仕事を担当することと、判断を任されること
海外拠点で働く中で、私は「現地社員に任せる」という言葉について考えることがあります。
日々の業務を担当することと、自分で判断し、責任を持って仕事を進めること。
その間には、大きな違いがあります。
たとえば、採用活動や候補者との調整を担当していても、採用の判断には関わる機会がない。
予算を作成し、数字の説明を求められていても、どこにお金を使うかを話し合う場には参加していない。
もちろん、すべての担当者が最終決定をするわけではありません。
ただ、実務を知る立場から意見を求められたり、自分の提案をもとに判断する機会を与えられたりすることは、その人の成長にとって大きな意味があります。
「この仕事をお願いします。」
その一言に加えて、
「あなたは、どう進めるのがよいと思いますか。」
と聞いてもらえるだけでも、仕事への向き合い方は変わってくるのではないでしょうか。
英語への不安が、任せることへの不安になるとき
駐在員の皆様にとって、現地社員に判断を任せることには、不安もあると思います。
赴任して間もない時期には、一人ひとりの経験や得意分野がまだ分からない。
現地の制度や商習慣にも慣れていない。
その中で、本社への説明や現地法人の運営に責任を負わなければならない。
慎重になるのも、自然なことだと思います。
さらに、英語でのコミュニケーションに壁を感じることもあるかもしれません。
「説明を十分に理解できているだろうか。」
「何か重要なことを聞き落としていないだろうか。」
「このまま任せて、問題が起きたときに説明できるだろうか。」
そうした不安から、自分で細かく確認したり、日本語で相談できる人を通して進めたりすることもあると思います。
それでも、使う言葉が違っていても、会社をよりよくしたいという目的は同じはずです。
現地社員も、自分の経験や専門性を生かし、同じチームの一員として力を発揮したいと考えています。
英語での説明がすべて分かるようになるまで待たずに、相手の経験や判断を、もう少し信頼してみてもよいのではないでしょうか。
数字や資料を使う。
重要な点を短くまとめてもらう。
決定事項と、確認が必要な事項を分けて共有する。
お互いに理解しやすい方法を工夫しながら、任せる範囲を少しずつ広げていくことはできると思います。
「どこまで決めてよいか」が分かると、人は動きやすくなります
「もっと主体的に動いてほしい。」
そう期待されていても、どこまで自分で決めてよいのかが分からなければ、確認を重ねることになります。
自分なりに判断した後で、
「そこは、先に相談してほしかった。」
と言われれば、次から慎重になるのも無理はありません。
任せるためには、期待する成果とともに、判断できる範囲を共有することが必要です。
「この条件の範囲内であれば、進めてください。」
「予算を超える場合は、事前に相談してください。」
「お客様への影響がある変更は、一緒に確認しましょう。」
こうした基準があれば、現地社員も自分の責任を理解して動けます。
駐在員の方も、すべてを細かく確認する負担を減らし、必要な判断に時間を使いやすくなると思います。
また、判断を任せるのであれば、そのために必要な情報も共有してほしいと思います。
会社が何を優先しているのか。
予算には、どのような制約があるのか。
本社は、何を懸念しているのか。
その背景を知ることで、現地社員も会社全体を考えながら提案し、判断できるようになります。
任せた後の対話が、次の判断を育てます
任せる範囲を決めた後も、対話は続きます。
期待した結果につながったときには、何がよかったのか。
うまくいかなかったときには、どこで判断が難しかったのか。
結果とともに、その過程を振り返る時間があると、経験が次の仕事につながっていきます。
「なぜ、その方法を選んだのですか。」
「判断するうえで、足りない情報はありましたか。」
「次は、何を変えるとよいと思いますか。」
こうした会話を通じて、現地社員は判断力を磨き、駐在員の方も、その人の考え方や強みを知ることができます。
一度の結果ですべてを判断せず、経験を重ねながら任せられる範囲を広げていく。
その積み重ねが、安心して仕事を任せられる関係を育てるのだと思います。
現地社員にも、信頼に応える責任があります
私たち現地社員にも、できることがあります。
提案するときには、その理由や選択肢を分かりやすく伝える。
進捗だけでなく、懸念や問題も早めに共有する。
判断に迷うことがあれば、必要なタイミングで相談する。
そして、自分が行った判断について説明する。
駐在員の方が現地の事情をすべて知っているわけではないことを踏まえ、相手が判断しやすいように伝える努力も必要です。
「任せてほしい」という気持ちを、日々の行動で示していく。
信頼に応えることも、私たちの役割だと思っています。
その人の「これから」にも、目を向けてほしい
長く実務を支えてきた現地社員は、安心して仕事を任せられる存在かもしれません。
一方で、頼りにされるほど、同じ役割を担い続けることもあります。
その人が、これから何に挑戦したいのか。
チームを率いてみたいのか。
専門性を深めたいのか。
新しい分野の仕事を経験したいのか。
そうした希望を話す機会は、どれくらいあるでしょうか。
現在の仕事を上手にこなしていることと、今後も同じ役割を望んでいることは、必ずしも同じではありません。
本人の希望を知り、次の役割に必要な経験を一緒に考える。
そして、その経験を積める仕事を任せていく。
そのような関わりがあれば、現地社員も、この会社で働く自分の将来を描きやすくなると思います。
最後に
駐在員の任期には区切りがありますが、現地の事業はその先も続いていきます。
任期中にどのような成果を上げたか。
そして、帰任した後に、現地のチームがどのような判断を自分たちでできるようになっているか。
その両方に目を向けることが、拠点の成長につながるのではないでしょうか。
言葉の壁を感じることはあっても、同じ目標に向かって働く仲間であることは変わりません。
駐在員が現地社員の力を信じ、任せる機会をつくる。
現地社員も、その期待に応えられるように考え、行動し、責任を引き受ける。
そうして一緒に仕事を進めた経験が、次の信頼につながっていきます。
前回お伝えした「理解すること」から、もう一歩先へ。
相手の力を信じて任せ、その人が力を発揮できる機会をつくる。
そこから、チームとしての成長が始まるのだと思います。
※本ニュースレターは一般的な情報提供を目的としており、特定の税務・投資アドバイスを行うものではありません。個別の判断については、401(k)プランの専門家または税務アドバイザーへご相談ください。
This article is intended as general information only and does not constitute professional advice. Using this document or any other material provided by Premier Kaikei LLP, Premier does not create a professional-client relationship. All information should be independently verified before being relied on or acted upon. Please speak to an experienced professional for case-specific questions.