金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX)~③J-SOXにおける評価対象~ (1)

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金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX)~③J-SOXにおける評価対象~ (1)

2025年07月01日

金融商品取引法「財務報告に係る内部統制報告制度」(J-SOX)~③J-SOXにおける評価対象~

それでは、今回からJ-SOXの実務について説明していきたいと思います。J-SOXにおいて評価対象とされる内部統制は以下の4種類です。いわゆるJ-SOXの“3点セット”を作成する対象の内部統制は「業務プロセスに係る内部統制」(図のC)ですが、それぞれの評価対象について詳細にみていきましょう。

A. 全社的な内部統制(IT全社的統制を含む) B. 決算・財務報告プロセスに係る内部統制 ※ 全社的な観点での評価が適切なものについては全社的な内部統制に準じて評価 C. 業務プロセスに係る内部統制 販売管理 購買管理 棚卸資産管理 固定資産管理など D. ITに係る内部統制 ITに係る全般統制 ITに係る業務処理統制

 

A.全社的な内部統制

全社的な内部統制は、連結ベースで企業の財務報告全体に重要な影響を及ぼす、企業全体を対象とする内部統制のことを指します。J-SOXではトップダウン型のリスク・アプローチを採用しているため、内部統制の有効性を評価するにあたり、まず全社的な内部統制の有効性を評価した上で、財務報告に係る虚偽記載につながるリスクを検討し、業務プロセスの範囲を絞り込んで評価します。そのため、経営者が会社の内部統制を整備・運用する責任を果たす上で、全社的な内部統制は最も重要な内部統制といえます。

J-SOXの実務上のガイドラインである「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(実施基準)に、 内部統制の基本的要素に基づく42の項目が例示されていますので、これらの項目からチェックリスト等を作成した上で質問や面談等を通して統制の有効性を評価する方法が一般的です。対象は、原則として全ての事業拠点を評価することになっています。

実施基準による評価項目の例 統制環境 ・経営者は、信頼性のある財務報告を実現し、財務報告に係る内部統制の役割を含め、財務報告の基本方針を明確に示しているか。・適切な経理担当や倫理観に基づき、社内の財務方針・運用ルールを明確化し、原則を逸脱した行動が発見された場合には、適切に是正が行われるようになっているか。・取締役会及び監査役等は、財務報告及びその内部統制に関し経営者を適切に監督・監視する責任を理解し、実行しているか。・経営者は、財務報告に対する組織としての組織構造や権限分掌、適切な役割分担がなされているか。 リスクの評価と対応 ・信頼性のある財務報告の作成のため、適切な階層の経営者、管理者を関与させる有効なリスク評価の仕組みが存在しているか。・経営者は、組織の変更やITの開発など、信頼性のある財務報告の作成に重要な影響を及ぼす可能性のある変化が発生する都度、リスクを再評価する仕組みを設定し、適切に対応しているか。・経営者は、不正に関するリスクを検討する際に、単に不正に関する表面的な事実だけでなく、不正を犯させる三要素(動機、機会、正当化)を考慮し、適切にリスクを評価し、対応しているか。 統制活動 ・信頼性のある財務報告の作成に対するリスクに対応して、これを十分に軽減する統制活動を確保するための方針と手続を定めているか。・経営者は、信頼性のある財務報告の作成に関し、職務の分掌を明確化し、権限や職責を担当者に適切に分担させているか。・統制活動を実施することにより検出される異常等は適切に調査され、必要な対応が取られているか。 情報と伝達・信頼性のある財務報告の作成に関する経営者の方針や指示が、企業内の全ての者、特に財務報告の作成に関連する者に適切に伝達される体制が整備されているか。・内部統制に関する重要な情報が円滑に経営者及び組織内の適切な各層に伝達される体制が整備されているか。・内部通報の仕組みなど、通常の報告経路から独立した伝達経路が利用できるように設定されているか。 モニタリング・日常的なモニタリングが、企業の業務活動に適切に組み込まれているか。・経営者は、内部統制の評価の範囲と頻度、リスクの重要性、内部統制の重要性及び日常的モニタリングの有効性に応じて適切に調整しているか。 ITへの対応・経営者は、ITに関する適切な戦略、計画等を定めているか。・経営者は、内部統制を整備する際に、IT環境を適切に理解し、これを踏まえた方針を明確に示しているか。 全42項目はこちらから:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」P.85〜87

 

B. 決算・財務報告プロセスに係る内部統制

決算・財務報告プロセスは、主として経理部門が月次残高試算表を作成し、個別財務諸表や連結財務諸表を含む外部公表用の有価証券報告書を作成する一連のプロセスのことです。当プロセスは、内部統制の目的の1つである「報告の信頼性」につながる最終ステップといえるため、全社的な内部統制(A)に次いで非常に重要といえます。

決算・財務報告プロセスには全社的な観点固有業務プロセスの観点で評価する領域があります。

  • 全社的な観点で評価することが適切と考えられるものについては、全社的な内部統制(A)に準じて、原則として全ての事業拠点について全社的な観点で評価を行います。これには、以下のような手続が含まれます。
    • 総勘定元帳から財務諸表を作成する手続
    • 連結修正、報告書の結合及び組替など連結財務諸表作成のための仕訳とその内容を記録する手続
    • 財務諸表に関連する開示事項を記載するための手続
  • 固有業務プロセスの観点には、個別財務諸表の作成に当たっての決算整理に関する手続等が含まれ、これらは業務プロセスに係る内部統制に近い性格があると解釈されます。よって、 「③業務プロセスに係る内部統制」と同じ個別の統制テストや文書化が行われます。これには、引当金、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性、税金計算などの見積もりやジャッジメントを伴ったり否定形・不規則な取引など、虚偽表示リスクが高いとされる勘定科目に係る業務プロセスも含みます。全社レベルの内部統制 (原則全ての事業拠点)① 全社的な内部統制② 決算・財務報告プロセスに係る内部統制 全社的な観点の決算・財務報告プロセス 単体財務諸表 連結財務諸表 開示 固有業務プロセスの観点の決算・財務報告プロセス 引当金 棚卸資産の評価 固定資産の減損など 業務プロセスレベルの内部統制(重要な事業拠点) ③ 業務プロセスに係る内部統制 販売管理プロセス 購買管理プロセス 経費精算プロセス 棚卸資産管理プロセス 固定資産管理プロセス 給与計算プロセスなど

決算・財務報告プロセスに係る内部統制は、財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスであることに加え、日常的な取引に関連する業務プロセスと比べて実施頻度が低く、また専門性が求められる領域です。したがって、決算・財務報告プロセスに係る内部統制に対しては、 一般に、他の内部統制よりも慎重に運用状況の評価を行う必要があります。

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