人材への投資が米国事業を強くする
米国でチームをつくり、運営する日本企業へ Premier Kaikeiの実践から学ぶ
著者:Hidehito “Jake” Kanai
米国で初めて拠点を開設する日本企業にとっても、既存の米国子会社を強化する日本企業にとっても、チームづくりは事業計画や予算の策定と並ぶ重要な課題です。従業員は、どのような成果が求められているのか、意思決定はどのように行われるのか、問題が起きたときは誰に相談すればよいのかを理解する必要があります。リーダーには、一人ひとりが力を発揮し、成長するために何が必要かを理解することが求められます。
私たちPremier Kaikeiにとっても、これらは身近な課題です。PKでは、組織の成長とともに、コミュニケーション、学び、そしてリーダーによる支援に力を入れてきました。ここまでの歩みを支えてきたのは、メンバーの尽力とクライアントの信頼です。同時に、組織が人をどう支えるかが、提供するサービスにも影響することを改めて実感しています。
以下では、PKでの経験を紹介します。日本本社、米国子会社のリーダー、そして米国進出を準備する企業にとって、実務に役立つヒントになると考えています。私たち自身も取り組みを改善し続けています。今回の共有が、有意義な意見交換につながればと思います。
本社と現地で期待することを明確に共有する
従業員の経験、強み、キャリアの目標、仕事以外で担う責任は、それぞれ異なります。リーダーはその違いを理解し、何を期待するのかを明確にしたうえで、本人と認識を合わせる必要があります。言葉が通じるだけで、優先順位や意思決定の権限、懸念の伝え方について共通認識が生まれるわけではありません。
PKでは毎月、全社ミーティング(タウンホール)を開き、最新の状況を共有し、組織の方向性を話し合い、質問を受け付けています。こうした場は、一人ひとりの担当業務と、組織全体が目指すものを結びつける役割を果たします。Gallupの研究は、成果や貢献を認めること、仕事上の関係、目標、強みについて、意味のある対話を重ねることの重要性を示しています。[1] 定期的な会合は、日々のフィードバックや個別の対話とともに、コミュニケーションの土台になります。
米国事業を立ち上げる日本企業では、現地で誰が何を決められるのか、どの事項に本社の承認が必要か、緊急の問題を誰に、どのように報告・相談するかを文書にすることが、有効な出発点です。既存の子会社では、従業員と本社がこれらの仕組みを同じように説明できるか、確認してください。定期的に話し合う場があれば、認識の違いが業務に支障をきたす前に把握できます。
学びをチームの日常業務に組み込む
毎月開催する勉強会「PK Cafe」は、知識を共有し、互いに学ぶ場です。年間を通じて行う集合研修も、専門知識や技術、専門家としての判断力を磨く機会になっています。こうした取り組みを支えているのは、自分の知識を共有し、よく考えた質問を投げかけ、仲間の成長を支えようとするメンバーの姿勢です。
クライアントにとって、その目的は実務に直結します。問題をわかりやすく説明し、特定分野の専門家の意見が必要な場面を見極め、役に立つ助言を提供できるチームを育てることです。テレサ・アマビールとスティーブン・クレイマーの研究は、意義のある仕事で前進を実感することの重要性を示しています。[2] 新しいスキルの習得や業務プロセスの改善を認めることで、一人ひとりが自分の成長がどのように役立っているかを実感できます。
米国で事業を運営するうえでの教訓は、学ぶ時間を業務の予定に組み込むことです。小規模な拠点であれば、よく起きる問題を取り上げる短い勉強会を毎月開き、合意した手順を共有マニュアルに記録することから始められます。互いの得意分野を補い合えるメンバーを組み合わせ、担当者が不在でも対応できる体制を整えることも、特定の一人への依存を減らす助けになります。専門知識、日本語でのコミュニケーション、現地での業務経験が一つの役割に求められる場合には、特に有効です。
クライアントと業務現場の視点を議論に取り入れる
PKに加わった最高管理責任者(CAO)は、日本語と英語に堪能で、日米両国の文化に通じ、会計事務所以外の事業会社で培った貴重な経験を持っています。彼女の視点は、私たちの助言がクライアントの組織内でどう受け止められ、実行されるかを考えるうえで、チームの会計専門知識を補っています。
専門的に正しい提案も、実行に使える人員、時間、システムを考慮することで、より役に立つものになります。例えば、月次決算の改善を助言するなら、各作業の責任者は誰か、情報はどこから来るのか、主要な担当者が不在のときに業務をどう進めるのかまで考える必要があります。PK全体で深めたいのは、こうした実務への理解です。
日本本社や米国のリーダーが方針や業務プロセスを導入する際にも、同じ考え方が当てはまります。実行を担う人たちと、目指す成果について話し合ってください。どのような支援が必要か、現地の業務に合わない前提はないか、進捗をどう評価するかを確認します。同じ国の出身者なら同じ見方をするはずだと考えず、一人ひとりの経験に基づく意見を求めてください。
管理職が連携し問題を解決する場を定期的に設ける
PKでは、パートナーと主要な管理職が2週間に一度集まり、気づいたことを共有し、優先順位を調整し、どのチームにどのような支援が必要かを話し合っています。こうした対話は、懸念を早い段階で把握し、案件ごとの判断の整合性を図る機会になります。
米国子会社でも、同様の会議でいくつかの具体的な問いに絞って話し合うことができます。業務の遂行を妨げかねない要因は何か。どこで人員や時間に余裕がなくなっているか。本社にどのような判断を求める必要があるか。誰が、いつまでに行動するか。決定事項と責任分担を記録し、実行まで追うことで、会議が役に立つものになります。
リーダーには、従業員が安心して懸念を伝えられる環境をつくることも求められます。エイミー・エドモンドソンの研究は、率直な議論と、専門家としての高い基準は両立できることを強調しています。[3] 不明確な指示を指摘したり、潜在的な問題を知らせたりする従業員は、よりよい結果に貢献しています。そのときの経営陣の対応は、次にほかの人が声を上げるかどうかにも影響します。
関係を築きさまざまな貢献を認める
年間を通じた研修や交流イベントは、PKのメンバーが担当業務の枠を越えて関係を築く機会になっています。定期的な対話の場とともに、こうした取り組みは、より前向きに働ける職場づくりにつながってきました。私たちは、それを支える貢献を大切にしています。根気強く教えること、引き受けたことを確実にやり遂げること、日々の業務で互いに助け合うことも、その一つです。
米国で事業を営む日本企業のリーダーにとって、事業を支える幅広い仕事と、その貢献を認めることが大切です。専門業務の品質を高める人もいれば、プロセスを改善する人、仲間を育てる人、クライアントとの関係を築く人もいます。キャリアについての対話では、一人ひとりが自分の強みをどう伸ばせるか、より広い責任を担うには何が求められるかを理解できるようにする必要があります。
実際に問うべきなのは、従業員が、自分の貢献と受けている支援、そして組織での将来とのつながりを見いだせているかどうかです。全員が同じ理由で意欲を持つと決めつけるよりも、この問いを定期的に確かめるほうが、リーダーが行動を決めるための確かな手がかりになります。
いくつかの取り組みから始めて共に改善する
米国拠点を開設する企業は、最初から責任分担を明確にし、本社と定期的に対話し、シンプルな学びの習慣をつくることができます。既存の子会社では、今の仕組みのどこで判断待ちが生じているか、同じ作業を繰り返しているか、特定の一人に頼りすぎているかを見直してください。改善点をいくつか選び、進め方を考える段階からチームに参加してもらい、実際に役立っているかを確認します。
PKの目標は、適切な会計、規律ある財務管理、実務に即した支援を通じて、クライアントがより自信を持って米国事業を運営できるようにすることです。メンバーへの投資は、その目標を実現するために私たちが果たすべき責任の一つです。リーダーは、優先順位を明確に示し、役に立つ研修を提供し、メンバーが日々の仕事で気づいたことを共有できる環境を整えなければなりません。
私たちPKのパートナーは、完璧ではありません。従業員から批判を受けたこともあり、離職も経験してきました。寄せられた意見は、耳の痛いものであっても、尊重し、真摯に受け止めています。こうした経験を通じて、自らのリーダーシップを見直し、どこを改善できるかを考える必要性を改めて感じています。メンバーが組織づくりに関わり、パートナーもメンバーをどう支えるかを学び続ける。そのように、私たちは共に成長していきたいと考えています。声に耳を傾け、自らを振り返り、寄せられた意見を十分に検討して改善につなげることが、私たちの責任です。
PKの皆さんへ。皆さんの専門性、心配り、互いに助け合う姿勢が、私たちの築く組織の基盤です。私たちとは異なる意見も含め、率直な意見交換を歓迎します。皆さんをよりよく支えるには何が必要か、どうすれば共に改善できるか、ぜひ考えを聞かせてください。疑問や懸念を伝える前に、解決策を練り上げておく必要はありません。
クライアントの皆様、そして同じく経営を担う皆様へ。皆様との意見交換も歓迎します。米国で皆様の社員が力を発揮するうえで、何が役に立ちましたか。経験を率直に共有し、チームから学ぶほど、クライアントによりよいサービスを提供し、働く人に成長の機会をもたらす事業を築く力が高まります。
出典と参考資料
[1] Gallup. A Great Manager’s Most Important Habit。2023年5月29日公開、2026年2月16日更新。
[2] Harvard Business School Working Knowledge. How Small Wins Unleash Creativity。2011年9月6日。テレサ・アマビールがスティーブン・クレイマーとの研究について解説。
[3] Harvard Business School. Leading in Tough Times。2022年11月22日。エイミー・エドモンドソンによる心理的安全性と、仕事や成果への責任に関する解説。
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